平成13年度のプラネタリウム


1.投映球の製作

成形して穴あけしたボウル

投映球と光源部・駆動部

ボウル内の光源部

製作した架台部品

架台部とモーター駆動部

組み上げた駆動部

完成した投映機

ドーム骨組み

貼り終えた新聞紙とベニヤ板

文化祭でプラネタリウム上映

 投映球は、ドーム型のスクリーンに星空を投映するための恒星原板となる部分であり、投映球の表面にピンホールをあけます。この投映球には、調理に使うアルミ製のボウルを使用しました。

(1)ボウルの成形
 直径27cmのアルミ製のボウルを北半球用と南半球用に2つ用意します。
 北半球側のボウルの平面部分を球面にたたき出します。ここでは、ボウルの平らな部分をきれいな球面にするため、根気よく少しずつたたき出します。
 南半球用のボウルの平面部分の中心に駆動部の軸端を取り付ける穴を開けます。

(2)ボウルに星図を描く
 ボウルの外側に、星図に合わせて経線を15度、緯線を10度の間隔でマジックで引きます。
 OHPフィルムに星図をコピーし、写し取る星の明るさごとにマジックで色分けします。今回写し取った星は4等星までとしましたが、星座を構成するのに必要な星である場合は5等星まで含めることにしました。
 星図をコピーしたOHPフィルムを裏返しで見ながら(ここがポイント)、ボウルの外側に引いた経線と緯線を頼りに、星の位置を星の明るさに応じて色分けしながらマジックで写し取ります。

(3)ピンホールの穴あけ
 星図の星をボウルに写し終えたら、色分けした星の明るさに応じて大きさを変えてピンホールをあけていきます。ピンホールの穴径は、投映される星の大きさを考え、0.8mmを4等星、等級間の明比率を2.1として決めました。
 表は、星の等級ごとのピンホールの穴径と、点光源としたとき直径3mのスクリーンに投映される星の大きさを示したものです。 

明比率 0等星 1等星 2等星 3等星 4等星
2.1 3.5mm 2.4mm 1.7mm 1.2mm 0.8mm
39mm 27mm 19mm 13mm 9mm

(4)仕上げと組み立て
 ボウル内側を艶消しの黒色スプレーで塗装し、ボウル内面の反射光がスクリーンに映らないようにします。そして、北半球と南半球のボウルを黒色の遮光性のあるプラスチックテープで接合し、光が接合面から漏れないようにします。

2.光源部の製作

 光源部は、投映球にあけたピンホールの星をドーム型のスクリーンに投映するための光源となる部分で、電球と電球を支える金具および電源から構成されます。

(1)光源部分
 光源となる電球には、懐中電灯に使われる2.5V0.5Aのクセノン球を使用しました。
 電球を支えるソケットとなる金具は、電球のフィラメントの位置が投映球の中心になり、投映球を35度傾けたとき電球が鉛直となるように厚さ1mmのアルミ板を曲げて作りました。

(2)電源部分
 光源の電源は、交流100Vをトランスで変圧して電圧可変型3端子レギュレーターを使った電源回路で目的の電圧の直流に変換しています。実際に使ってみると3端子レギュレーターの発熱が予想以上に大きく、より大きな放熱板に替える必要がありました。

3.駆動部の製作

 駆動部は、投映球を支えて回転させる架台の部分と、日周運動を表現するため投映球をゆっくりと回転させるモーター駆動の部分で構成されます。

(1)架台部分
 投映球を支えてモーター駆動により滑らかに回転させるための架台を構成する部品は、外径50mmのアルミ丸棒および外径20mmの真鍮丸棒から旋盤という工作機械により削りだしていきます。
 旋盤という工作機械は、加工する材料を旋盤の主軸に取り付け回転させながら、バイトと呼ぶ刃物で削っていく工作機械です。このような工作機械が使えるのは工業高校の強みです。

(2)モーター駆動部分
 投映球を回転させる動力源として、マブチの工作用モーターを1個と、タミヤの3速クランクギアボックスを2組使います。また、モーター用の電源として、乾電池2本を使用します。
 減速ギアボックスは、プラネタリウムの上映時間を日没から日の出まで4分〜5分となるようにするため、低速(減速比203.7)で組んだギヤーボックスを2つつなげます。
 ギアボックスから投映球までの動力伝達は、ギアボックスの出力軸に模型用ゴムタイヤ(外径35mm)を取り付け、ローレットを刻んだ投映球架台の外周(外径50mm)に押し付けることにより行ないます。
 この結果、モーターから投映球までの総減速比は59,276となり、投映球の回転速度は約0.11rpmとなります。これは、投映球つまり天球が1分間に0.11回転する速さとなります。そのため、天球が約9分で1回転という速さで日周運動することになります。
 2組のギアボックスを一体にするため、厚さ1mmのアルミ板をL字形に曲げて取り付け、架台部分とモーター駆動部分を結合するための、厚さ3mmのアルミ板を使います。

4.ドームの製作

 ドームは、投映機で投映した星を映し出すスクリーンとなる半球形をした屋根の部分と、円筒形をした壁の部分から構成されます。ドーム型の屋根は地平線より上の星が見える夜空の部分で、円筒形の壁は地平線より下の星が見えない部分となります。

(1)ドームの大きさと構造
 ドームの大きさは、平成12年度に製作したドームの反省から直径3mにしました。3mあれば十分な広さがあり、観客も7〜8人が余裕を持って入ることができるからです。
 ドームの構造は、上下に2分割し、さらにそれぞれを2分割する4分割にして、重くはなるが丈夫な鉄骨による溶接構造としました。
 作り方は、L型鋼(20mm×20mm)を組み合わせて溶接により骨組みを作り、さび止め塗装をした後、上部のドーム型屋根は新聞紙を貼ることにより球面を形作り、下部の円筒面にはベニヤ板を貼ることにしました。

(2)上部のドーム型屋根に紙を貼る
 上部骨組みの隙間を竹ひごで埋めていきます。次に、新聞紙を水で薄めた洗濯糊で、骨組みの外側と内側に貼っていきます。
 新聞紙を貼る作業は、1枚だけでは光を通してしまうので、乾いてから何重にも重ねて貼っていきます。球面屋根の内側から見て光が通らなくなったら十分に乾かし、内側に白色の水性ペンキをむらの無いように塗ります。

(3)下部の円筒面に壁を貼る
 下部骨組みの大きさに合わせてベニヤ板を切り、骨組みの間に切断したベニヤ板をビスで貼り付けます。ベニヤ板とベニヤ板の合わせ部分の隙間には、光が入らないように細長く切断したベニヤ板を重ねて貼り付けます。入り口の扉となるベニヤ板は、あて木をあてて円筒面に合わせて曲げ、蝶番を取り付けます。
 組み上がった円筒面の内側は地平線より下となるので、投映した星が写らないように艶消し黒色の水性ペンキで塗装します。

5.文化祭(一般公開)でのプラネタリウム上映

 平成13年11月10日(土)の文化祭(一般公開)で、完成したプラネタリウムを展示・上映し、多くの観客に見てもらいました。

(1)文化祭前日にプラネタリウムが完成
 4月から製作してきたプラネタリウムですが、製作に時間がかかり、投映機が完成したのは7月の夏休み直前。そして、ドームが完成したのは文化祭前日の夜遅くになってしまいました。
 当初2名だった部員も6月には1名加わり、10月には更に1名加わり、合計1年生ばかりの4名になりました。このような少人数で、しかも、慣れない旋盤作業やアーク溶接を行いながら製作を続け、文化祭の約1ヶ月前からは夜の8時頃まで毎日残り、完成を目指して頑張ってきました。 
 完成したプラネタリウムのドームは4分割になっており、このドームを部室となっている物理室から展示会場である普通教室へ運び出し組み立てました。そして、ここで初めての上映です。上映を始めるまではどの程度の星が映し出されるのだろうか不安でしたが、いざ上映をしてみると等級間の星の明暗差のある予想以上の星がスクリーンに映し出され、部員からは思わず声があがったほどです。

(2)文化祭でのプラネタリウム上映の様子
 ドームには一度に7〜8人は楽に入ることができ、上映時間は星が東の空から昇り西の空に沈むまでの4分間に設定しました。
 ドームの外側は新聞紙やベニヤ板を貼ったそのままの状態で少し見苦しいのですが、これも手作りの味です。(時間と部費に余裕があれば外側も塗ってきれいに仕上げたかったのですが、なにせ・・・・。)
 ドームの中は、当然のごとく真っ暗で密閉された状態となります。完成したのが前日の夜遅くということもあり、洗濯糊や水性ペンキの臭いで一杯となり、とても表現のできない臭いとなっていました。そのため、文化祭当日の朝、香料スプレーを買いに走らなければならなかったほどでした。

(3)アンケート結果
 来場してドームの中に入っていただいた観客の数は、数えただけでも107名にのぼりました。書いていただいたアンケートの多くは「きれいに映っていた。」とか「よく出来ていた。」というもので、なかには「来年も来ます。」という感想もあり、多くの観客に喜んでもらえたようです。
 また、「もっと星が多いとよい。」「もっと星が明るいとよい。」「天の川が見えるとよい。」「解説があるとよい。」という感想もあり、このことについては来年度の課題として対応していきたいと考えています。


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